実績・実例 CASE STUDY

アルミ鋳物導入事例

 株式会社島津製作所

超高真空分析を支えるアルミ鋳物の“超真空チャンバー”

分子が何百メートル飛行しても何にも当たらない“地上250kmの超高真空空間”。その環境を手元で作り、医薬品の品質管理や研究分野で分析を行う装置があります。10-5Pa(10マイナス5乗パスカル)という真空環境を実現したアルミ鋳物部品で、「分子を漏らさない」チャンバーはどのようにして誕生したのでしょうか。その製造プロセスと検査には田島軽金属独自のノウハウがあります。

ユーザープロフィール

株式会社島津製作所

創業:1875年3月

事業内容:分析計測機器、医用機器、産業機器、航空/海洋/磁気計測機器の開発、製造

HP : https://www.shimadzu.co.jp/

島津製作所の分析器に用いられている真空チャンバー部品

お客様の課題

1砂型鋳造で超高真空チャンバーを作りたい

超真空チャンバーで課題解決

1超高真空10-5Paに耐えるアルミ鋳物チャンバーの開発

2普及品アルミ鋳物チャンバーにも受注が広がった

ミッション:超高真空チャンバーを開発せよ!

「超高真空」とはどういう状態でしょうか。

国際宇宙ステーションISSの軌道は地上400km。流星が出現するのは地上200kmから100kmと言われます。超高真空とはその間の地上250km以上の空間です。その空間には何があるのでしょうか?

低真空(low vacuum)は105Pa~102Pa(例:1万メートルを飛ぶ航空機)、中真空(medium vacuum)は102Pa~10-1Pa(例:ロケットの飛行高度)、高真空(high vacuum)は10-1Pa~10-5Pa(例:オーロラの発生する高さ)です。そして超高真空(ultra high vacuum)は、10-5Pa~10-8Pa(例:国際宇宙ステーションISSの飛ぶ軌道)という世界です。

注目を集める島津製作所様から打診を受ける

「漏れないチャンバーを作れますか?」

ある時、島津製作所様から直接の引き合いが寄せられ、展示会で弊社のアルミ半導体チャンバーを紹介しました。田島軽金属では2000年代から半導体チャンバーで実績を挙げています。半導体製造工程は真空で、チャンバーは各種ガスにもさらされる厳しい環境下で使われる部品です。しかし島津製作所様の要求仕様は超高真空に相当する「桁外れ」なものでした。

分子を漏らさないチャンバーとは

漏らさないためには鋳物の表面にピンホールを作らないこと。その製造プロセスでは、アルミ溶解時にリターン材(リサイクル品)を含まない素材を使います。また空気中の水分とアルミが反応するのを減らすため、溶湯後60分以内に注湯します。こうしてピンホールができにくい状態を維持しながら鋳物を製作します。仕上がりは頑健で滑らかな肌を持つ鋳物です。

そのテスト評価には厳しい検査が導入されています。一般的な鋳物では「加圧テスト」で重量物を入れて圧力をかけ、変形が閾値に収まるかどうか検査します。しかしこのチャンバーでは「ヘリウム漏れテスト」も実施します。チャンバーにヘリウムガスを吹き付けて分子のリーク(漏れ)がないかどうか、ヘリウム•リーク•ディテクターにより測定します。

「ヘリウム•リーク•ディテクターを2機も保有するのは鋳物業界では当社くらいです」と田島軽金属の担当者は話します。この最高峰の真空チャンバー製作成功をきっかけに、現在では普及型装置のチャンバーも数多く納めています。

島津製作所の分析器に用いられている
真空チャンバー部品

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