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高周波押湯加熱システム

押湯を強制加熱して押湯効果を高める新技術

高周波押湯加熱システム

(※本システムは、ダイハツメタル、第一高周波工業、田島軽金属の3社の共同開発による)

 

「高周波押湯加熱システム」の原理と効果

◆押湯を高周波で強制加熱することにより指向性凝固を促進し、引け巣を防止する。

「高周波押湯加熱システム」の原理と効果

特許出願(共同開発(株)ダイハツメタル、第一高周波工業(株)、(株)田島軽金属)

 

「高周波押湯加熱システム」の実施例

(1).肉厚変動が大きく押湯が効き難い、高品質が要求される
⇒ 加熱押湯で溶湯補給能を改善、引け巣防止で品質を向上
(2).押湯が多く歩留が悪い、鋳仕上工数が大
⇒ 加熱押湯で歩留が大幅に向上、鋳仕上工数の低減

「高周波押湯加熱システム」の実施例

砂型低圧鋳造(ハイブリッド・キャスト)

アルミ基複合材鋳物のハイブリッド砂型低圧鋳造法の開発

アルミ基複合材鋳物は、従来材料を超える優れた特性を持つ新素材であり、高性能構造部材として適用が進められているが、難鋳造材であるために多くの課題を持っている。本研究は、そのアルミ基複合材を鋳造性良くかつ高い生産性で鋳造するために、砂型鋳造に低圧鋳造原理と高周波押湯加熱技術等を適用して高度化した革新的な鋳造法(ハイブリッド砂型低圧鋳造法)を開発・実用化する。

従来技術と新技術の比較

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アルミ基複合材鋳物部品の用途とニーズ

■液晶/半導体製造(検査)装置部品
■工作機械部品(超高速精密加工機など)
■部品搬送組立装置部品
■その他各種精密機械部品

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ハイブリッド砂型低圧鋳造法の開発

ハイブリッド砂型低圧鋳造法の構築

ハイブリッド砂型低圧鋳造法

ハイブリッド砂型低圧鋳造法の原理

ハイブリッド砂型低圧鋳造法の原理

(出願済特許:3件)

鋳巣極小化(ポアレス・キャスト)

新技術 砂型アルミ鋳物の高品質化と真空部品などへの適用

==ポアレスキャスト(高品質砂型アルミ鋳物)の開発と実用化==

1.アルミ削出し部品の問題点と鋳物化のメリット

アルミの圧延板やブロック材からの削出しで作られる真空チャンバなどの箱物部品では、一般に材料の多くが切粉として除去されるために材料歩留が悪く、また加工時間の無駄も多い。部品が大きくなるほどこの傾向は顕著になり、最近急速に大型化が進んでいる半導体や液晶製造装置の部品などでは、それによる材料コストの大幅なアップや加工納期の長期化が問題となってきている。アルミ鋳物の特長は、ニアネットシェイプで部品素材を供給できるために、それら板やブロックからの削出し部品に比べて材料の無駄が少なくまた加工時間も少なくて済むことであり、鋳物化することによってコスト低減と短納期化が可能となる。

また削出し品の場合は、素材(板、ブロック)の寸法、形状の制約を大きく受けるが、鋳物の場合は地金を溶解しそれを自由な形に鋳造するだけなので、材料供給面(寸法、形状、納期)での制約は非常に少なく自由度が高い。とくに大型化が進むにつれ鋳物化のメリットは増大してくる。そのほかに、鋳物の形状自由度の大きさを生かして、複数の部品を一体化したり、削り出し品では加工困難であった複雑形状を鋳物にすることにより、設計自由度が大幅に増加するなどの利点もある。また部品強度や剛性面でも、鋳物のリブ構造などを採用することにより極めて容易に剛性、強度の向上と軽量化を同時に実現することもできる。

自硬性砂型アルミ鋳物の製造工程説明図

図1 自硬性砂型アルミ鋳物の製造工程説明図

2.自硬性砂型アルミ鋳造法の特徴と従来の問題点

引け巣およびガス欠陥の例
図2 引け巣およびガス欠陥の例

アルミ鋳物の鋳造法として、ダイカスト、金型鋳造、低圧鋳造、砂型鋳造など多くの鋳造法があるが、多品種少量生産に適しまた形状自由度の高い鋳造法として 自硬性砂型鋳造法が挙げられる。この鋳造法は1kg以下の小物から2t以上の大物まで低コストで効率よく製造できる優れた鋳造法である。

図1に、 自硬性砂型アルミ鋳造法の工程概略を示す。木(またはプラスチック)でできた模型を用い、その周囲を鋳物砂(砂に樹脂粘結剤と硬化剤を混ぜたもの)で固め て鋳型を作り、その鋳型に溶融アルミ合金を鋳込んで鋳物をつくる。砂型鋳造では、ダイカストや金型鋳造法のような高価な金型を使わないので初期投資が少な くて済み、また型製作期間も短い。また木型は型修正が容易なので設計変更へも迅速に対応できる。一方、砂型鋳造法の短所としては、金型鋳造法などに比べ て、一般に、内部欠陥(引け巣やガス欠陥)が発生しやすく内部品質が劣る傾向にあることが挙げられている。

図2に、自硬性砂型による試験用アルミ鋳物ブロックに発生した引け巣及びガス欠陥の例を示す。溶融アルミが凝固冷却する時に体積が収縮するため、凝固が遅い押湯及びブロック上方に、収縮によって生じた比較的大きな空隙(引け巣)が
広範囲に発生している。またその引け巣は穴同士が部分的に内部で繋がり、内面に細かい凹凸がある不定形な形状をしていることがわかる。

それらの引け巣とは別に、その下方からブロックの中央付近にかけて小さな点状の穴が多数発生しており、この穴は凝固時にアルミ溶湯から放出されたガス(水素)によって発生したガス欠陥であり、欠陥の形は引け巣とは明らかに違い、独立した丸い穴状で内面は比較的滑らかである。
従来、砂型アルミ鋳物が真空部品等の気密部品へあまり使われなかったのは、これら内部欠陥の発生がリークの原因や汚れ発生源となって真空性能に悪影響を及ぼす恐れがあることが最大の理由であると考えられる。

3.砂型アルミ鋳物の内部品質の向上(ポアレスキャストの開発)

砂型アルミ鋳物のこのような内部欠陥については、砂型固有の性質として従来見過ごされてきていたが、最近、砂型アルミ鋳造の各工程(材料、方案設計、造型、溶解、溶湯処理など)を新たな視点で見直し、各要素技術の改善や新しいプロセス技術の開発などにより、砂型アルミ鋳物の内部欠陥を防止し内部品質を大幅に向上させることが可能になった。
表1に、砂型アルミ鋳物の内部品質向上(引け巣、ガス欠陥の防止)のための各種要素技術の改善、開発の概要を示す。
要素技術としては、主に引け巣防止のための新技術「高周波押湯加熱システム」、引け巣及びガス欠陥を防止するための方案設計及び材料技術、主にガス欠陥を防止するための溶湯・注湯工程管理技術などが挙げられ、引け巣及びガス欠陥等に対してその発生原因に応じたそれぞれの技術的な対策を実施した。以下、それら各要素技術について簡単に説明する。

(1).「高周波押湯加熱新システム」の開発

引け巣欠陥は、溶融アルミが凝固収縮する時に収縮部への溶湯補給が不足することが原因で発生し、その防止のために鋳物には溶湯補給のための押湯が設けられている。押湯効果はその温度が高いほど高くなるが、注湯温度以上になることはないので時間とともに温度低下し効果は減少する。

高周波押湯加熱システムは、押湯を外部から強制加熱することにより押湯効果を飛躍的に高めることを目的に開発された技術である。高周波誘導加熱を利用して押湯を高温に加熱することにより、押湯効果が凝固終了まで持続し、引け巣を防止することができる。またこのシステムでは押湯の本数や体積を従来に比べて大幅に減らすことができ、材料歩留の向上、押湯切断などの鋳仕上げ工数の減少などによるコスト低減ができる。
図3に、高周波押湯加熱システムの概要を示す。高周波加熱装置は、押湯部に鋼製の押湯加熱スリーブを用い、これを高周波電磁誘導によって発熱させ、その鋼製スリーブの熱で押湯を周囲から間接的に加熱する構造となっている。この加熱装置の特徴は、鋼などの磁性金属が磁気変態点温度以上で磁性を消失し電磁誘導発熱しなくなる性質を利用して、鋼製の押湯加熱スリーブ自体に自己温度調節機能を持たせたことであり、これにより温度調節装置が不要になり極めてシンプルな構造になっている。図4は、高周波押湯加熱の効果確認のため、試験ブロック(約35kg)の鋳込み実験を行った結果を示す。従来の押湯に比べ非常に小さい押湯(数分の1以下)であっても優れた押湯効果を発揮し、製品部には全く引け巣は見られず健全な製品が得られた。
図5は、従来の押湯方案で鋳造していた実製品に、高周波押湯加熱システムを適用してその効果を比較した例であり、押湯加熱による内部品質の向上とともに、コスト面(押湯本数は3分の1以下、鋳込み重量は20%以上の低減)でも顕著な効果が得られた。このように高周波押湯加熱システムは、砂型アルミ鋳物の引け巣欠陥を防止し、内部品質を向上させるための極めて有効な技術である。

 

表1 砂型アルミ鋳物の鋳巣極少化技術の内容(各種要素技術の改善、開発)

要素技術 改善、開発の内容 効果
(1)新技術の開発 砂型アルミ鋳物用の高周波押湯加熱システムの開発(※) 押湯効果の飛躍的改善による引け巣防止
(2)方案設計 湯流れ/押湯/冷却等の実験的検討及びCAE解析による方案設計標準の見直し、最適化 指向性凝固の促進による引け巣防止
最適な湯流れ/押湯/冷却効果による内部欠陥の低減
(3)材料技術 アルミ合金の成分調整、新合金の開発 成分最適化による内部欠陥の低減
(4)製造工程の管理 溶湯処理(脱ガス処理、ガス量管理、添加剤)及び注湯工程の管理技術/条件の高度化 脱ガス効果、ガス吸収防止によるガス欠陥の防止
溶解・注湯の作業、条件の適正管理による内部欠陥の低減

(※ 共同開発(特許出願済):(株)ダイハツメタル、第一高周波工業(株)、(株)田島軽金属)

高周波押湯加熱システム

図3 高周波押湯加熱システム

 

(2).鋳造方案設計の最適化
鋳物試片ブロックの断面
鋳物試片ブロックの断面
図4 高周波押湯加熱システムによる
試験ブロックの断面
(押湯加熱以外の条件は図2と同

 

鋳造方案設計は、鋳造にあたっての鋳型の分割や湯口、湯道形状あるいは押湯や冷し金の配置、注湯条件などの様々な鋳造条件を決める重要な工程であり、鋳造 欠陥の有無や品質の良否は鋳造方案によって大きく左右される。従来、経験主体で行われていた方案設計について、押湯や冷し金の効果、湯流れの影響などにつ いて実験的に、また流動解析や凝固解析などを利用して理論的に検討し3)方案設計標準の見直しと最適化を行い内部品質の向上を図った(図6)。

(3).内部品質向上のための材料技術

現在、アルミ鋳物材料としてJIS合金も含めて多くの合金が使われているが、引け巣やガス欠陥の発生傾向はそれら合金の種類、さらにはそこに含まれる合金元素の種類と量によっても大きく異なる。真空部品などの気密性を重視した砂型アルミ鋳物材料として、引け巣、ガス欠陥ともに最も少なくなるような合金元素の種類、配合を求めた。JIS合金をベースに成分調整したアルミ合金のほかに、用途に応じて特殊配合成分のアルミ合金も新たに開発した。

図5 実製品への高周波押湯加熱システム適用例

図5 実製品への高周波押湯加熱システム適用例

 

図6 鋳造方案設計例

図6 鋳造方案設計例

 

(4).製造工程の管理
図7 溶解工程における溶湯処理の例
図7 溶解工程における溶湯処理の例

アルミ鋳物のガス欠陥は、その殆どがアルミ溶湯に溶解した水素ガスが原因である。そのため図7に示すように、溶解工程ではアルミ溶湯中に不活性ガスを吹き 込んで水素ガスの脱ガス処理を行う。またアルミ溶湯への水素ガスの吸収そのものを減らすため、それぞれの工程において色々な作業や管理が行われる。ガス欠 陥を極力減らすためには、それらの全ての工程において従来に比べより高度で効果的な作業、処理条件の管理が必要となる。

図8 高品質砂型アルミ鋳物による実製品の試作(内部品質向上対策による内部欠陥の防止)

図8 高品質砂型アルミ鋳物による実製品の試作(内部品質向上対策による内部欠陥の防止)

 

4.ポアレスキャスト(高品質砂型アルミ鋳物)部品の実用化

4.1 実機製品による対策効果の確認

上記3の対策により内部品質の向上を図った鋳物の装置部品への適用例を示す(図8)。この部品は高い内部品質が要求され、従来はアルミ圧延材からの削出しで製作されていたもので、今回その鋳物化のための試作を行った。図8(a)は、比較のために特別な対策なしの条件(最低限の押湯/冷し金、溶湯処理など)で製造した場合で、(b)は鋳巣極少化の対策を行った場合である。(a)の場合、目視外観上はとくに問題ないが、加工後の鋳物表面を染色探傷試験すると微小なガス欠陥が散在している。一方、(b)の鋳巣極少化鋳物ではそれらの欠陥は殆ど見られず、圧延材削出し品に匹敵するレベルの表面状態が得られた。なお、その鋳物試作部品では脱ガステストによる性能調査も行い、圧延材部品と同等であることを確認した。
現在、同種の大型の部品(重量約350kg)において、ポアレスキャスト鋳物が実用化されている。

4.2 鋳物真空チャンバの真空基本性能の確認
図9 テスト用鋳物真空チャンバ(内寸法:□300×150H)
図9 テスト用鋳物真空チャンバ(内寸法:□300×150H)

ポアレスキャストによるテスト用鋳物小型真空チャンバ(内寸法□300×150H)を試作し、ヘリウムリークディテクタを用いてその基本的な真空性能を調査した。図9に試作した砂型アルミ鋳物チャンバを示す。図9(a)は、チャンバ内面が鋳肌にショットブラストしたままのもの、(b)は鋳物の内面を約5mm 機械加工したものである。それら鋳物チャンバのほかに比較のために圧延材の削出しチャンバもテストに用いた。図10に真空性能テストの方法を示す。鋳物あるいは圧延材のテスト用チャンバにヘリウムリークディテクタを接続し、内部を真空引きして外側からヘリウムガスを吹き付けリークテストを行った。またチャンバに取り付けた真空計により真空引き中のチャンバ内の真空度を測定し、テスト中の圧力の時間的変化についても調査した。

 リークテストの結果、真空チャンバのリーク性能は砂型アルミ鋳物(内面鋳肌品、内面加工品)及び圧延材ともにリークレートはいずれも 1.1×10-10[Pa・m3/sec]程度と、リーク性能に殆ど差はなかった。それら各材質のテスト用チャンバについて、真空引き中の圧力変化曲線を 比較したものを図11に示す。鋳物と圧延材、また鋳物については鋳肌面と加工面との間に圧力変化の差は見られるが、その差はわずかであり、とくに内面加工 の鋳物チャンバは圧延材チャンバと真空到達性能はほぼ同等レベルにあるといえる。

図10 テスト用真空チャンバによる真空性能の確認

図10 テスト用真空チャンバによる真空性能の確認
(ヘリウムリークディテクタによるリーク及び真空度試験)

 

4.3 実機真空チャンバへの砂型アルミ鋳物の適用
図11 テスト用真空チャンバの圧力変化曲線 (鋳物チャンバと圧延材チャンバとの比較)
図11 テスト用真空チャンバの圧力変化曲線
(鋳物チャンバと圧延材チャンバとの比較)

ポアレスキャストにより製造された砂型アルミ鋳物は前述のように真空性能は圧延材に近いレベルにあり、従来削出し品が使われていた真空チャンバ等の真空機 器部品については、かなりの範囲で鋳物が適用可能である。現在、ポアレスキャスト(高品質砂型アルミ鋳物)はいくつかの真空機器部品へ適用が進んでおり、 その例を図12~14に示す。一部の製品では、内面の一部あるいは全部を鋳肌のまま使用する検討も進められている。

図12 アルミ鋳物真空チャンバ

図12 アルミ鋳物真空チャンバ
(半導体製造装置用)
(大きさ1100×550×150 ,重量 100kg)

図13 アルミ鋳物真空チャンバ
図13 アルミ鋳物真空チャンバ
(液晶製造装置用)
(大きさ1600×1400×300 , 重量600kg)

 

図14 アルミ鋳物ハウジング
図14 アルミ鋳物ハウジング
(真空ポンプ部品)
(大きさ960×420×400 , 重量140kg)

以上のように、砂型アルミ鋳造における各要素技術を見直し、その改善や開発また新プロセスの高周波押湯加熱システムの開発などによって、内部欠陥が極めて少なく内部品質の優れた砂型アルミ鋳物(ポアレスキャスト)の製造が可能になった。これにより従来、鋳物があまり使われていなかった真空部品へ砂型アルミ鋳物が適用できるようになるなど、その用途が広がりつつあり、アルミ鋳物の重要性は今後さらに増してくるものと考えられる。

 

参考文献)
1)松浦、田島、高田、平山、林
日本鋳造工学会第146 回講演大会概要集(2005)、p.38
2)松浦
日本鋳造協会平成17 年度秋季大会技術講演会(2006)
3)松浦、岸、櫻井、佐藤、木島
日本鋳造工学会第148 回講演大会概要集(2006)、p.39

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